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F4316 今週売り切り!GIA鑑定付 Cartier 宝石商の王 カルティエ 大粒ダイヤ0.40ct G VVS2 最高級Pt950無垢リング #49 3.65G 4.7mm  
     

  • Product Quantity
    : 1
  • Starting Bid
    :1円
  • Highest Bidder
    : RINKO / Rating:345
  • Listing Date
    :2025年10月28日 17時25分
  • Bidding closes on
    :2025年11月04日 21時20分
  • Auction Number
    :m1205437143
  • Condition
    :State it in the description
  • Automatic Extension
    :Yes
  • Authentication
    :No
  • Early Closing
    :Yes
  • Can I return the product?
    :no
  • Description
  • Q&A ()
  • Cost Estimator
  • Problem Item Response Procedur
Notes
  1. The page has a fragile description, and fragile items cannot be shipped by sea. They can only be shipped by air. If the goods are not fragile, they can be shipped by air.
  2. ※Mahogany trees are items that are in conflict with the Washington Treaty and cannot be shipped internationally.
事務所を前の場所に約1年ぶりに引っ越しましたので、またジュエリーやろうかと。こちらは舞台をフランスのベル・エポックに移した物語を、登場人物の心情や時代の息遣いを深く描き込み、妄想させていただきますた。鑑定は引っ越しのどさくさで見つからないので探しておきます!

時を越えた誓い:パリのダイヤモンド

序章:令和、運命の環

大阪、南船場。御堂筋の喧騒から逃れるようにして伸びる石畳の路地に、その店はあった。時代物の洋館を改装したそのブティックの真鍮のプレートには、ただ「ブランドクラブ」と、優雅な筆記体で記されているだけだ。重厚なマホガニーの扉を開けると、カラン、と澄んだベルの音が客を迎える。店内は、選び抜かれたヴィンテージジュエリーだけが放つことのできる、静かで気高い光に満ちていた。それぞれの宝石が、過ぎ去りし時代の愛憎や歓喜を、その内に秘めて沈黙しているかのようだ。
若きジュエリーデザイナー、水野葵(みずのあおい)は、ここ数週間、仕事の合間を縫っては、この店に通い詰めていた。彼女の心を捉えて離さないものが、ベルベットの敷かれたショーケースの中央に、鎮座していたからだ。
F4136 GIA鑑定付 Cartier 宝石商の王 カルティエ 大粒ダイヤ0.40ct G VVS2 最高級Pt950無垢リング #49
添えられたカードの無機質な文字列は、その指輪が持つ物語の、ほんの表層をなぞっているに過ぎない。中央に据えられた0.40カラットのダイヤモンド。Gカラーという評価は、専門家の目をもってしてもほとんど色味を感じさせない、純粋な光の結晶であることを示している。VVS2というクラリティは、10倍のルーペで覗き込んでも内包物の発見が困難なほどの、奇跡的な透明度を意味した。
そして、そのダイヤモンドを戴くのは、プラチナ950の台座。当時、ゴールドよりもはるかに融点が高く、加工が至難の業であったこの貴金属を、これほどまでに繊細で流麗な曲線に仕上げる技術は、まさに「宝石商の王」と謳われたカルティエの真骨頂であった。アームを飾るように、緻密な計算のもとにセッティングされたメレダイヤの輝きが、センターダイヤモンドの絶対的な存在感を、まるで夜空の星々が月を讃えるかのように引き立てている。
しかし、葵の魂を揺さぶったのは、そうした鑑定書が保証する物理的な価値ではなかった。この指輪には、命が宿っている。葵は本能的に、そして確信をもってそう感じていた。それは、過去の所有者の思い出といった、感傷的なものではない。もっと根源的で、荒々しいエネルギー。創造主の、血を吐くような苦悩と、天にも昇るような歓喜。報われることのなかった愛の祈りと、芸術に身を捧げた者の孤独な魂の叫び。そのすべてが、ダイヤモンドの幾何学的なファセットの奥深く、原子の結合に至るレベルで封じ込められているかのような、凄まじい気配を放っていた。
「葵、またこの子に会いに来たのかい?まるで恋人に会うみたいだね」
背後からかけられた穏やかな声に、葵ははっと我に返った。恋人の橘海斗(たちばなかいと)が、柔らかな笑みを浮かべて立っている。彼は、古い建造物の歴史的価値を深く理解し、その魂を未来へと繋ぐ再生建築の分野で、若くして頭角を現している建築家だ。古いものに敬意を払い、そこに新たな命を吹き込むという彼の哲学は、ヴィンテージジュエリーに秘められた物語を現代に蘇らせたいと願う葵の想いと、深く共鳴していた。
「……恋人、かもしれない。私、この指輪を作った人の声が聞こえる気がするの」葵は真顔で答えた。「ただ美しいだけじゃない。何か、常識とか、時代とか、そういうものすべてを打ち破ってでも、自分の信じる美を表現したかった人の、強くて、そしてとても切ない意志を感じる」
その熱のこもった言葉を、海斗は目を細めて聞いていた。彼は、葵のその常人には理解しがたいほどの深い感受性こそが、彼女を唯一無二のデザイナーたらしめているのだと知っていたし、そんな彼女のすべてを心から愛していた。葵がデザインするジュエリーは、常に物語を内包していた。忘れられた神話、異国の詩、あるいは雨上がりのアスファルトに映るネオンの光。彼女のフィルターを通すと、あらゆる事象が、形と輝きを持つ詩となって生まれてくるのだ。
海斗は、葵の言葉を聞きながら、自らの胸ポケットに忍ばせた小さな箱の感触を、そっと指先で確かめた。彼の決意は、もう揺らぐことはなかった。葵の28歳の誕生日、そして二人が出会って5周年を迎える記念すべき夜に、この指輪で彼女の魂ごと、自分の人生に迎え入れよう、と。
数週間後、二人の記念日。大阪の夜景を一望するホテルの最上階、星屑を閉じ込めたようなシャンデリアが輝くフレンチレストランで、彼らは向かい合っていた。美しいディナーの皿が下げられ、デザートが運ばれてきたタイミングで、海斗は意を決したように、ジャケットの内ポケットから、あのベルベットの箱を取り出した。深いロイヤルブルーのケースだった。
「葵」
海斗が、緊張でわずかに震える指で箱を開ける。そこに収められていたのは、南船場の「ブランドクラブ」で葵が心を奪われていた、あのカルティエのリングだった。店の柔らかな照明の下で見た時とは違い、レストランのドラマティックな光を受けて、ダイヤモンドはまるで自ら発光しているかのように、鋭く、そして妖艶な輝きを放っていた。
「君というプリズムと出会って、僕のモノクロームだった世界は、鮮やかな光に満ちた。君のいない未来は、もう設計できない。これからの人生、僕の隣で、一緒に未来を築いていってほしい。僕と、結婚してください」
建築家である彼らしい、誠実で、少し不器用なプロポーズの言葉。その一つ一つが、葵の心の最も柔らかな場所に沁みわたっていく。彼女の瞳から、大粒の涙が止めどなく溢れ落ちた。夢にまで見た光景が、想像していた以上に温かく、そして愛おしく、今、現実のものとなっている。
「……はい、よろこんで」
涙でかすむ声でやっとの思いでそう答えると、海斗は心の底から安堵したような、少年のような笑顔を見せた。彼は指輪を手に取ると、聖なる儀式を執り行うかのように、そっと葵の左手の薬指に滑り込ませた。
プラチナのひんやりとした感触が、確かな重みを伴って葵の肌に伝わる。葵が、指に宿った永遠の輝きに、魂ごと吸い込まれるように見入った、その瞬間だった。
世界が、音を立てて白に染まった。
ダイヤモンドが放ったとは思えないほどの、絶対的な光の奔流が、葵の視界を、思考を、存在そのものを純白に塗りつぶす。驚愕に目を見開く海斗の顔が、厚いすりガラスの向こう側のように歪み、遠のいていく。レストランの優雅な喧騒も、窓の外に広がる宝石箱のような夜景も、すべてが光の中に溶解し、意味を失っていく。葵の意識は、時空の激流に抗う術もなく引きずり込まれ、急速に薄れていった。
最後に彼女が感じたのは、指にはめられたリングが、まるで一つの心臓のように熱く、力強く脈打つ、不可思議で鮮烈な感覚だけだった。

第一部:美しき時代の迷い人

第一章:1910年、光の都パリ
意識が浮上する感覚は、長く深い夢から無理やり引き剥がされるそれに似ていた。最初に届いたのは音だった。硬い石畳を叩く、規則的で軽快な馬の蹄の音。人々の話し声。それは日本語ではなく、流れるようなフランス語の響きを持っていた。そして、微かに鼻をつく、石炭の燃える匂いと、焼き栗の香ばしい香り。
葵はゆっくりと目を開けた。目の前に広がっていたのは、高層ホテルの洗練された内装ではなく、埃っぽく、しかし活気に満ちた、見知らぬ街角だった。優雅な鉄の装飾が施されたバルコニーを持つ石造りのアパルトマン、街路を柔らかな光で照らすガス灯、コルセットで極端に腰を細く絞ったドレス姿の貴婦人たち、シルクハットを被りステッキを小脇に抱えた紳士たち。時折、けたたましいクラクションを鳴らして、クラシックなフォルムの自動車が馬車を追い越していく。
「……どこ、ここ?」
混乱する頭で呟く。自分が立っているのは、明らかにパリの街角だった。しかし、その風景は、葵が知る21世紀のパリではない。あらゆるものが、セピア色の映画のワンシーンのように、古風で、美しく、そしてどこか非現実的だった。新聞売りの少年が叫ぶ見出しには「1910年」という数字が見える。第一次世界大戦の足音がまだ遠くにしか聞こえない、華やかな文化が爛熟した「ベル・エポック(美しき時代)」のパリ。葵は、その只中に、たった一人で放り出されていた。
自分の服装は、レストランにいた時と同じ、シンプルなノースリーブのワンピース。周囲の人々は、奇妙な、そしてあまりに肌を露わにした衣装をまとう東洋の女を、好奇と侮蔑と、ほんの少しの恐怖が入り混じった、複雑な視線で遠巻きに眺めている。孤独と不安が、冷たい手のように葵の心臓を鷲掴みにした。
左手の薬指に目を落とす。そこには、この異常事態の引き金となったであろう、あのカルティエのリングが、何事もなかったかのように燦然と輝いていた。しかし、最愛の人、海斗の姿はどこにもない。彼の温もりも、声も、ここにはない。
途方に暮れ、溢れ出しそうになる涙を必死で堪えていると、葵の目に、ある店のショーウィンドウが飛び込んできた。そこには、彼女が知る、あの優雅で気品に満ちた筆記体のロゴが、金文字で掲げられていた。
"Cartier"
そして、その下には「13, Rue de la Paix(ラ・ペ通り13番地)」という住所が誇らしげに記されている。宝飾の王が、その地位を不動のものとした伝説の本店。まるで暗闇の中で灯台の光を見つけたかのように、葵は吸い寄せられるように店の重厚な扉に手をかけた。
店内に一歩足を踏み入れると、そこは王侯貴族のプライベートサロンと見紛うばかりの、豪奢で洗練された空間だった。高い天井にはクリスタルのシャンデリアが輝き、壁にはルイ16世様式の優美な装飾が施されている。しかし、葵の場違いな服装と、明らかに混乱している様子に気づいた、口髭をたくわえた支配人らしき男が、冷たい視線で彼女の行く手を阻んだ。
「何か御用ですかな、マドモワゼル。ここは、そのような方がいらっしゃる場所では……」
その時、店の奥から、カツ、カツ、とステッキの音が響いた。現れたのは、鋭い眼光と、 meticulously に整えられた髭を持つ、初老の紳士だった。その全身から放たれる、揺るぎない権威と、芸術家特有の神経質なオーラは、彼がただ者ではないことを示していた。彼はルイ・カルティエ。伝統を重んじながらも、プラチナやアール・デコといった革新的な要素を取り入れ、カルティエの名を世界に轟かせた、三代目の当主その人だった。
彼は葵の姿を一瞥し、その貧相な(彼の目にはそう見えた)身なりに一瞬眉をひそめた。だが、次の瞬間、彼が葵の左手の指輪に目を留めた時、その泰然自若とした表情が、驚愕に凍りついた。
「……Impossible(ありえない)。その指輪……それはまだ、私のアトリエで製作中のもののはずだ。なぜ、それが完成し、君の指にはまっている?」
ルイのただならぬ様子に、店内の空気が張り詰める。彼は葵に、有無を言わせぬ強い口調で、アトリエへ来るよう命じた。
店の奥に広がるアトリエは、表の華やかなサロンとは別世界の、静かな緊張感と、創造の熱気に満ちていた。何人もの職人たちが、ロウソクと、窓から差し込む北向きの柔らかな光だけを頼りに、黙々と作業に打ち込んでいる。金属を削る微かな音、宝石を爪に留める繊細な槌の音だけが、神聖な儀式のように響いていた。
その一角で、ひときわ深く腰をかがめ、作業台に向かう一人の青年がいた。歳は葵と同じくらいだろうか。黒髪は少し乱れ、その指先は仕事で汚れているが、驚くほど繊細で長い。芸術家特有の憂いを帯びた瞳は、手元の作業だけに集中し、外界のすべてを遮断しているかのようだ。彼こそが、このアトリエで最も才能を認められ、そして最も気難しいと言われているプラチナ細工の職人、ジュリアン・ヴァレリーだった。
そして、彼の目の前の作業台の上には、鹿皮の台座に固定された、一つの指輪があった。葵の指にはまっているものと、寸分違わぬデザイン。ただし、それはまだセンターダイヤモンドが留められておらず、生命を吹き込まれるのを待つ、美しい骸のように横たわっていた。
ルイが、ジュリアンの肩を無言で叩き、葵の指輪を顎で指し示す。作業に没頭していたジュリアンは、億劫そうに顔を上げた。そして、葵の指輪を一目見るなり、彼の顔から血の気が引いていくのがわかった。その表情は、驚愕から困惑へ、そして自分の聖域を侵されたかのような激しい怒りへと、目まぐるしく変わっていった。
「モ、ムッシュー・カルティエ……これは、一体どういうことです?私が今、魂を込めて作っているものが、なぜ完成してここに……?この女は誰です!?」
ジュリアンは動揺し、葵を睨みつけた。その瞳には、自分の魂の一部を、創造の苦しみを、最も神聖な秘密を盗まれたかのような、深い憎悪の色さえ浮かんでいた。
葵は、もはや記憶喪失を装うことすらできず、ただ震えて立ち尽くすしかなかった。ルイ・カルティエは、しばらくの間、二つの指輪と、葵の顔、そしてジュリアンの顔を交互に見つめ、その鋭い頭脳で状況を分析していた。やがて、彼は一つの決断を下した。
「……この娘は、何かの秘密を握っている。おそらくは、我々の想像を超える何かを。ジュリアン、お前がこの娘の身元が判明するまで、監督役として彼女の面倒を見ろ。決してアトリエから出すな。そして、この不可解な現象の原因を突き止めるのだ。これは、カルティエの名誉に関わる、最重要の問題だ」
こうして、葵は、逃れることのできない巨大な運命の渦に巻き込まれるように、1910年のパリ、ラ・ペ通りのカルティエのアトリエで、ジュリアンという名の、心を閉ざした天才職人と、奇妙な監禁生活を始めることになったのだった。
第二章:監視下の職人
ジュリアンは、葵に対してあからさまな敵意と、底知れぬ不信感を抱いていた。彼は、葵がライバル店の、例えばヴァンドーム広場に店を構えるブシュロンあたりが送り込んできた悪質なスパイか、あるいは何かの黒魔術を使うジプシーの類ではないかと本気で疑っていた。彼は葵を、アトリエの片隅にある、古い工具やデザイン画が山積みになった薄暗い物置部屋に押し込め、そこから一歩も出ないよう厳命した。食事は、無愛想な給仕が日に二度、硬いパンと薄いスープを運んでくるだけだった。
言葉も通じない。頼れる人もいない。未来への希望も見えない。葵は、深い孤独と絶望に苛まれた。毎晩、海斗の名前を呼びながら、指輪を握りしめて泣いた。しかし、指輪はただ冷たく輝くだけで、何の奇跡も起こしてはくれなかった。
だが、数日が経つうちに、葵の心にわずかな変化が生まれた。デザイナーとしての、抑えがたい好奇心。彼女は、物置部屋の扉の隙間から、来る日も来る日も、ジュリアンの仕事を盗み見た。それは、苦痛であると同時に、彼女の魂を根底から揺さぶる、荘厳な体験でもあった。
ジュリアンが手掛けている指輪は、ある有力な公爵が、その若く美しい妻、エリザベート公爵夫人のために注文した、特別な品だった。そして、彼はこの作品で、当時まだ宝飾界では異端とされていた「プラチナ」という素材の可能性を、世に知らしめようとしていた。
ゴールドよりもはるかに硬く、融点が1700度を超えるプラチナの加工は、困難を極めた。当時の未熟な技術では、鋳造の際に気泡が入りやすく、研磨すればその輝きは鈍い鉛色になりがちだった。アトリエの古参の職人たちは、ジュリアンの挑戦を「若気の至り」と冷ややかに見ていた。しかし、ジュリアンは信じていた。プラチナだけが持つ、その純粋で、冷徹なまでの白い輝きこそが、ダイヤモンドの氷のような光を、何ものにも邪魔されずに最大限に引き出すことができる唯一無二の金属である、と。
彼は、まるで気難しく、そして気高い恋人を口説き落とすかのように、昼夜を問わずプラチナと格闘していた。何度も溶解に失敗し、やっとの思いで成形したアームを、ほんのわずかな力加減のミスで折ってしまう。そのたびに、彼は誰にも聞こえないほどの低い声で悪態をつき、そして再び、最初から作業をやり直すのだ。その姿は、狂気とさえ言えるほどの執念に満ちていた。
葵は、彼の孤独な戦いを、息を殺して見守った。そして、デザイナーとしての知識が、彼女にいくつかの疑問を抱かせた。なぜ、彼はもっと効率の良い方法を試さないのだろう?例えば、ロウで原型を作るロストワックス法をもっと洗練させれば……いや、この時代にはまだその技術は確立されていないのかもしれない。
ある日、ジュリアンが、アームからダイヤモンドを支える爪(プロング)への繋ぎ部分の造形に、何時間も行き詰まっているのを見かねて、葵は思わず、物置部屋から声をかけてしまった。
「あの……!その、アームから爪への流れですが、もし、もう少しだけ滑らかに、まるで一本の線から organically(有機的に)生えているかのように削り出せば、石座全体がもっと軽やかに、宙に浮いているように見えるかもしれません。未来では……いえ、その、私の故郷に伝わる意匠では、そういう考え方が……」
つたない、辞書で引いた単語を並べただけのフランス語。ジュリアンは、突然声をかけられたことに驚き、そしてすぐに侮蔑の表情を浮かべた。
「素人が口を出すな。お前のような者に、私の芸術がわかってたまるか」
しかし、その夜、葵が眠りについた後、ジュリアンは一人アトリエに残り、葵が言った通りの方法を、密かに試していた。そして、翌朝、葵が目にした指輪の爪は、昨日までとは比べ物にならないほど、優雅で生命感のある曲線を描いていた。
ジュリアンは何も言わなかった。しかし、その日から、二人の間にわずかな変化が生まれた。彼は、葵が物置部屋から出て、アトリエの隅で作業を見ていることを、黙認するようになった。そして時折、デザインに関する葵の革新的な(彼にとっては未来的にすぎる)意見に、反論しながらも、耳を傾けるようになった。
「センターストーンをより大きく見せるなら、周りのメレダイヤの石留めを、共有爪という技法にすれば、金属の使用量を最小限に抑えられます」
「このアームの断面、少しだけ内側を削る『裏抜き』をすれば、指なじみが格段に良くなるはずです」
葵が語る、マイクロスコープを使った石留めの技術や、人間工学に基づいたデザインの概念は、ジュリアンにとっては魔法か、あるいは戯言のように聞こえた。しかし、それらのアイディアの根底に流れる、機能性と美しさを両立させようとする哲学は、彼の創造力を強く、深く刺激した。
二人の間には、少しずつ、敵意や不信とは違う感情が芽生え始めていた。言葉は通じなくとも、一つの芸術品を前にした時、彼らは互いを理解できる、同種の魂を持った人間だった。それは、職人としての奇妙な、そして危険な連帯感だった。葵は、海斗を想い、一刻も早くこの悪夢から覚めたいと願いながらも、目の前の芸術のために己のすべてを捧げるジュリアンの純粋な情熱に、抗いがたく惹かれていく自分を、どうすることもできずにいた。
第三章:公爵夫人の憂鬱
そんなある日の午後、アトリエの空気が一変した。依頼主であるエリザベート公爵夫人が、進行状況を確かめるために、アトリエを訪れたのだ。彼女が姿を現した瞬間、埃っぽいアトリエが、まるで教会のように神聖な空気に満たされた気がした。
彼女は、ラファエロが描いた聖母像から抜け出してきたかのように、儚げで、そして人間離れした美しさを持っていた。しかし、その完璧な美貌とは裏腹に、彼女の紫水晶のような瞳の奥には、常に深い憂いと諦観の色が漂っていた。年の離れた、権威的で嫉妬深い公爵との結婚は、彼女の意思とは全く無関係に決められた政略結婚であり、彼女が心の底から笑うことはない、とアトリエの職人たちは噂していた。彼女は、パリで最も美しい鳥籠に囚われた、一羽のカナリアだった。
エリザベートは、製作途中の指輪を、レースの手袋を外した白い指でそっとつまみ上げた。
「Magnifique(素晴らしいわ), ジュリアン。まるで、冬の朝の光をそのまま凍らせた氷の彫刻のよう……。この純粋で、穢れのない輝きを見ていると、私の澱んでしまった心まで、少しだけ洗われるような気がします」
その時、ジュリアンがエリザベートに向ける視線に、葵は気づいてしまった。それは、単なる職人が、高貴な顧客に向ける尊敬の眼差しではなかった。そこには、身分という決して越えることのできない壁の向こう側にいる、聖女を見上げるかのような、敬虔で、痛切なまでの愛情と憧憬の色が、隠しようもなく滲んでいた。
葵は、雷に打たれたような衝撃と共に、すべてを理解した。
ジュリアンは、この指輪に、エリザベートへの秘めた想いのすべてを注ぎ込んでいたのだ。この指輪は、ただの宝飾品ではない。彼の愛の結晶であり、祈りそのものだった。彼女が、権威と富の象徴として夫から与えられるこの指輪を、その白く細い指にはめる時、ほんの一瞬でも、その心が慰められるように。その指先で、富や権力とは無縁の、一人の職人が捧げた真実の愛の輝きを感じられるように。その切なる祈りこそが、この指輪のデザインの根源にあったのだ。
そして、この指輪が時を越え、自分の元にやって来た理由も。
その事実に気づいた時、葵は自分の使命を悟った。この指輪は、ジュリアンの報われぬ愛の物語の、最も重要な証人なのだ。そして自分は、その物語の結末を最後まで見届け、彼のあまりにも純粋で、そして孤独な魂の救済を、未来へと繋ぐために、この時代へと呼ばれたのに違いない、と。
葵の心は決まった。もはや、ただの傍観者ではいられない。この物語に、自分もまた、登場人物の一人として関わらなければならないのだ。

第二部:魂の共鳴

第四章:二人のアトリエ
葵の中で何かが変わった瞬間から、彼女とジュリアンの関係もまた、新たな段階へと入っていった。彼女はもはや、物置部屋の隅から遠慮がちに助言するだけの存在ではなかった。ジュリアンがデザインの細部で悩んでいると、彼女は黙って隣に立ち、スケッチブックを手に取り、淀みない線で alternative(代替案)を描いてみせた。
「ここの曲線を、フィボナッチ数列に基づいて構成すれば、より自然で、人の目に心地よい黄金比が生まれるはず」
「このメレダイヤの配置、ただ並べるのではなく、夜空の天の川のように、あえて不規則な流れを作れば、もっと詩的な表情になると思わない?」
彼女の口から語られる、この時代にはまだ存在しないデザイン理論や、異文化からのインスピレーションは、ジュリアンの固定観念を心地よく破壊し、彼の創造の泉を激しく刺激した。ジュリアンは、初めこそ彼女の突飛なアイディアに反発し、激しい議論を交わしたが、最終的には、彼女の提案が常に作品をより高みへと引き上げることを認めざるを得なかった。
いつしか、昼間の喧騒が去った後、アトリエには二人だけが残るのが常となった。ロウソクの揺れる光の下で、言葉の壁を越え、デザイン画と、互いの瞳の輝きだけで対話する。それは、彼らにとって最も濃密で、創造的な時間だった。
ある夜、ジュリアンは珍しく、自分の過去についてぽつりぽつりと語り始めた。彼は南仏の貧しい鍛冶屋の息子として生まれ、幼い頃から金属を扱う才能に恵まれていたこと。より繊細で美しいものを創りたいという渇望が、彼をパリへと導いたこと。そして、初めてプラチナという金属に出会い、その秘められた可能性に魂を奪われたこと。
「誰もが、あの金属を、扱いにくい、ただの工業用の素材だと言う。だが、私には見えるのだ。プラチナの奥に眠る、決して錆びることのない、永遠の魂の輝きが。エリザベート様も、同じだ。誰もが彼女を、公爵の美しい飾り物としてしか見ていない。だが、私にはわかる。あの人の瞳の奥にある、決して誰にも穢すことのできない、気高い魂の輝きが」
彼の言葉を聞きながら、葵は自分の胸が締め付けられるのを感じた。ジュリアンは、プラチナとエリザベートという、二つの高貴で、そして孤独な存在に、自分自身の魂を重ね合わせているのだ。
葵もまた、自分のことを話した。未来から来たという真実は伏せたまま、遠い東の島国で、自分もまた、宝石に物語を吹き込む仕事をしているのだと。
「私の国では、すべての物に魂が宿ると考えられているの。石にも、木にも、一本の線にさえも。だから、デザインをするということは、その物に宿る魂と対話し、その声を聞き、最も美しい形を与えてあげること。あなたも、同じでしょう?あなたはプラチナの声を聞いている」
ジュリアンの瞳が、驚きに見開かれた。初めて、自分の芸術の核心を、完全に理解する他者に出会ったのだ。彼は、葵という存在が、もはや単なるスパイや魔女ではなく、時代と国境を越えて自分の魂を理解する、唯一無二の協力者(コラボレーター)であり、共鳴者(ソウルメイト)であると認めざるを得なかった。
海斗への想いは、葵の心の中で少しも色褪せてはいなかった。しかし、それとは全く別の次元で、ジュリアンという、あまりにも純粋で、脆く、そして美しい魂に、強く惹かれていく自分を、葵は否定することができなかった。それは、恋とは違う、もっと根源的な、魂の結びつきだった。
ジュリアンの指輪のデザインは、葵という触媒を得て、当初の予定をはるかに超える、神々しいまでの美しさへと昇華していった。それはもはや、単なる宝飾品ではない。二人の芸術家の魂が、プラチナの上で交わり、融合して生まれた、奇跡の結晶だった。
第五章:秘密の彫刻
数週間後、エリザベートが再びアトリエを訪れた。指輪が最終段階に近づいていると聞き、その進捗を確かめに来たのだ。その日、ジュリアンはちょうど席を外しており、アトリエには葵と、数人の職人しかいなかった。
エリザベートは、葵の存在に気づき、わずかに眉を寄せた。
「あなたは、確か……以前ここにいた、東洋の方ね。まだいたの」
その声には、貴族特有の、人を寄せ付けない冷たさがあった。しかし、葵は怯まなかった。彼女は、目の前の絶世の美女が、その美しさの中にどれほどの孤独を隠しているかを知っていたからだ。
「はい、公爵夫人。私は、ジュリアンの仕事の、ほんの少しのお手伝いをさせて頂いております」
葵が、澱みのないフランス語でそう答えると、エリザベートは少し驚いたように目を見開いた。
「フランス語が話せるのね。……あの気難しいジュリアンが、助手を置くなんて。あなた、よほど変わった人に違いないわ」
その言葉には、ほんの少しだけ、人間的な興味の色が混じっていた。葵は、この機会を逃してはならない、と直感した。
「公爵夫人。もし、ご不快でなければ、お聞かせください。あなた様にとって、最も心安らぐ、愛おしいものは何でございますか?」
唐突な質問に、エリザベートは一瞬戸惑いの表情を浮かべた。しかし、葵の真摯な瞳に見つめられ、彼女は、まるで夢を見るように、ぽつりと呟いた。
「……スズランよ。私がまだ、嫁ぐ前の、南仏の生家の庭に、春になると咲き誇っていた、小さな白い花。あの香りの中にいる時だけが、私が本当に自由でいられた時間だったわ……」
その儚げな告白を聞いた時、葵の頭の中に、一つの大胆なアイディアが閃いた。
ジュリアンがアトリエに戻ると、葵は彼を物置部屋に呼び寄せ、声を潜めて提案した。
「ジュリアン。この指輪の、ダイヤモンドを留める石座の裏側……誰の目にも触れない、あの小さな空間に、秘密の装飾を施しましょう」
「秘密の装飾だと?」
「ええ。エリザベート様が愛する、スズランの花をモチーフにした、極めて微細な透かし彫りを。それは、公爵には決して気づかれず、指輪を指から外して裏返した、夫人だけが目にすることができる、あなたから彼女への、秘密のメッセージになる。あなたが、彼女の魂の自由を、誰よりも理解し、願っているという証になるわ」
それは、あまりにも危険で、常軌を逸した提案だった。依頼主の注文にない装飾を、それも依頼主の妻への個人的なメッセージを込めて施すなど、職人として、そしてカルティエの一員として、決して許される行為ではなかった。もし発覚すれば、ジュリアンはすべてを失うことになる。
ジュリアンは激しく葛藤した。しかし、葵の瞳の中に、自分と同じ、芸術のためならすべてを賭ける覚悟を持った、共犯者のような輝きを見た時、彼の心は決まった。彼は、静かに、しかし力強く頷いた。
その日から、二人の最後の、そして最も危険な共同作業が始まった。夜、すべてのアトリエの職人が帰宅した後、ロウソクの光だけを頼りに、ジュリアンは神業のような技術で、直径数ミリの空間に、スズランの花を彫り込んでいく。葵は、彼の傍らで、息を殺してその作業を見守った。それは、二人にしかわからない、愛と芸術のための、美しくも罪深い儀式だった。
第六章:忍び寄る嵐
指輪が完成に近づくにつれ、アトリエの中には不穏な空気が漂い始めていた。ジュリアンの才能が、ルイ・カルティエに特別に目をかけられていることへの、古参の職人たちの嫉妬。そして、エリザベート公爵夫人が、ジュリアンという一介の職人に、あまりに頻繁に会いに来ることへの、下世話な噂。
「公爵夫人は、あの指輪ではなく、ジュリアン本人に会いに来ているんじゃないのか」
「公爵様は、ヨーロッパ一の嫉妬深いお方だという噂だ。もしバレたら、ただじゃ済まないぞ」
そんな噂話が、葵の耳にも届いていた。そして、その噂は、公爵自身の耳にも届いていた。彼は、妻の行動を監視させ、彼女がジュリアンと必要以上に親密にしていること、そして、彼女が密かに、若い無名の詩人と恋に落ち、逢瀬を重ねているという事実を突き止めていた。公爵の歪んだ嫉妬心は、妻の不貞と、ジュリアンの指輪に込められた芸術的な情熱を、邪な共犯関係として結びつけてしまった。
エリザベートが、駆け落ちを計画しているという噂が、アトリエ内を駆け巡ったのは、指輪が完成する、ほんの数日前のことだった。その噂を聞いた時の、ジュリアンの絶望に満ちた顔を、葵は忘れることができない。彼は、エリザベートの幸せを願っていた。しかし、その幸せが、自分ではない、別の男との逃避行の先にあるという現実は、彼の心を深く引き裂いた。
それでも、彼は手を止めなかった。いや、むしろ、より一層、鬼気迫る集中力で、指輪の仕上げに没頭した。もはや、この指輪は、エリザベートへの愛の証ではなかった。それは、彼の打ち砕かれた夢と、芸術家としての最後の誇りを刻みつけるための、鎮魂の儀式となっていた。
運命の日が、嵐の前の静けさのように、刻一刻と近づいていた。

第三部:永遠の輝き

第七章:断罪の日
その日、アトリエの扉が、まるで破壊されるかのように乱暴に開け放たれた。そこに立っていたのは、怒りで顔を紫色に変えた、公爵その人だった。彼は二人の屈強な男を従え、まっすぐにジュリアンの作業台へと歩み寄ってきた。
「貴様だな!私の妻を唆し、不貞の片棒を担いだ、不埒な職人というのは!」
公爵の怒号が、神聖なアトリエの静寂を切り裂いた。職人たちは、恐怖に凍りつき、作業の手を止めた。
ジュリアンは、青ざめた顔で立ち上がったが、恐怖よりも、深い侮蔑の光を瞳に宿して公爵を睨み返した。
「……閣下。何を仰せか、私には理解しかねます。私はただ、ご注文の品を、我が魂の全てを懸けて製作しておりました」
「白々しい嘘をつけ!貴様が、この指輪に、妻との不貞の証を刻み込んだことは、調査済みだ!あの女が愛するスズランの彫刻……それを、私に隠れて施したであろう!」
どこからか、秘密の彫刻のことが漏れていたのだ。おそらくは、ジュリアンを妬む職人の誰かが、公爵に密告したのだろう。公爵は、ジュリアンの手から完成間近の指輪をひったくると、それを床に叩きつけて、そのブーツで踏み潰そうとした。
「やめてください!」
咄嗟に叫び、指輪を庇うように身を投げ出したのは、葵だった。彼女は、公爵の足元にされながら、指輪を胸に抱きしめた。この指輪は、ジュリアンの魂そのものだ。それを、こんな形で穢されてたまるものか。
公爵の怒りの矛先が、葵にも向けられた。
「なんだ、この東洋の小娘は!共犯者か!まとめてセーヌ川に叩き込んでやる!」
公爵が、葵の髪を掴もうとした、その時。
「そこまでにされよ、公爵閣下」
静かだが、鋼のような意志のこもった声が響いた。ルイ・カルティエが、いつの間にか、公爵の背後に立っていた。
「その指輪は、たとえ閣下のご注文品であろうとも、我がカルティエが、その名誉と歴史の全てを懸けて製作した芸術品。そして、このアトリエは、私の城です。いかなる理由があろうとも、私の職人と、私の作品を、ここで傷つけることは、私が許しません」
ヨーロッパ中の王侯貴族を顧客に持つ、ルイ・カルティエの揺るぎない威厳。その気迫に、さすがの公爵も一瞬たじろいだ。しかし、彼は憎悪に満ちた目でジュリアンを指差し、吐き捨てるように言った。
「……よかろう。だが、その男は、即刻解雇しろ!二度と、このパリの宝飾業界で働けぬように、貴様の手で抹殺してしまえ!」
そう言い残し、公爵は嵐のように去っていった。
ジュリアンは、その場に崩れ落ちた。職人としての誇りも、未来も、そして、彼が命懸けで守ろうとした秘めた愛も、そのすべてが、一瞬にして砕け散った。
後に聞いた話では、エリザベートの駆け落ち計画は未然に防がれ、彼女は南フランスの修道院に、生涯幽閉されることになったという。二度と、パリの社交界に、彼女が姿を見せることはなかった。
第八章:魂の刻印
アトリエを追放されたジュリアンは、数日後、誰にも告げずにパリを去る準備をしていた。ルイ・カルティエの計らいで、あの指輪だけは、奇跡的に無傷のまま守られた。しかし、もはやその輝きは、ジュリアンにとって、癒えることのない傷口の痛みであり、失われたすべての象徴でしかなかった。
彼は、旅立つ前の最後の夜、ルイに懇願し、一人、アトリエに残ることを許された。最後の仕事として、この指輪を、自らの手で完璧に完成させるために。
ロウソクの光だけが揺れる、真夜中のアトリエ。葵は、物陰から、静かに彼の最後を見守っていた。
ジュリアンは、センターストーンである0.40カラットのダイヤモンドを、ピンセットで慎重に掴んだ。そして、プラチナの台座に、そっと置いた。それは、もはや単なる石留めの作業ではなかった。引き裂かれたエリザベートへの愛、打ち砕かれた芸術家としての夢、そして、この理不尽な世界への静かな怒り。彼の砕け散った魂のかけらを、一つ、また一つと、ダイヤモンドの冷たいファセットに埋め込んでいくような、痛々しく、そしてあまりにも美しい、壮絶な儀式だった。
最後の爪を倒し、ダイヤモンドが完全に固定された時、指輪は、まるで初めて呼吸をしたかのように、生命の輝きを放ち始めた。ジュリアンは、最後の磨き上げを終えると、職人用のルーペを目に当て、その完璧な仕上がりを、まるで我が子の顔を確かめるかのように、静かに見つめた。
その完璧な輝きの中に、彼のすべての想いが成就したことを、葵は感じ取った。
その瞬間。
葵の左手の薬指にはめられた指輪が、これまでで最も強く、そして激しい光を放った。それは、もはや白というよりは、すべての色を含んだ、純粋なエネルギーの奔流だった。
「ジュリアン……!」
葵の声が、光の中に吸い込まれ、溶けていく。ジュリアンの驚愕に目を見開いた顔が、陽炎のように歪み、遠ざかっていく。ベル・エポックのパリの風景が、愛おしいアトリエの匂いが、色と香りを失っていく。
「君は……一体、何者だったのだ……?私の前に現れた、天使だったのか、それとも、悪魔だったのか……」
消えゆく意識の彼方で、ジュリアンの魂からの問いかけが、確かに響いた。葵は、頬を伝う熱い涙もそのままに、彼に最後の言葉を届けようと、心の底から必死に叫んだ。
「あなたの魂は!あなたの芸術は、決してここで終わりじゃない!百年後の未来で、私が……!私があなたの想いを、あなたの魂の輝きを、永遠に変えてみせるから!!」
それが、葵が美しき時代に残した、時を越えた誓いの言葉だった。
終章:時を越えた誓い
「葵!葵、しっかりしろ!僕がわかるか!葵!」
耳元で叫ぶ、愛しい人の声。現実と夢の境界が曖昧な中で、ゆっくりと目を開けると、そこには涙でぐしゃぐしゃの顔で、葵の顔を覗き込む海斗の姿があった。レストランの窓の外には、見慣れた、そして今は涙が出るほど懐かしい、令和の大阪の夜景が広がっている。
「……かいと、さん?」
「よかった……!気がついたんだな……!」
海斗は、心から安堵した表情で、葵の体を強く、強く抱きしめた。葵は、彼の腕の温もりと、規則正しい心臓の鼓動を感じながら、自分が無事に、愛する人のいる現代に戻ってきたことを、全身で理解した。
左手の薬指に目をやる。そこには、あの指輪が、まるで長い、長い旅を終えた巡礼者のように、穏やかで、深く、そして満ち足りた光を放って、静かに収まっていた。しかし、それはもう、葵がプロポーズの時に受け取った指輪ではなかった。ジュリアンの芸術への執念、エリザベートへの報われぬ愛、ベル・エポックの光と影、そして葵自身の誓い。そのすべてを内包した、世界でただ一つの、魂の器となっていた。
葵は、目の前の海斗の顔を、改めて見つめた。時空を越えた、あまりにも壮絶な愛の物語を体験した今、当たり前のように自分の隣にいて、自分のことを心から心配してくれる彼の存在が、どれほど奇跡的で、尊いものかを、骨身に沁みて理解していた。
「海斗さん。私、あなたと結婚できて、本当に、本当に幸せです」
その言葉には、タイムスリップする前とは比べ物にならないほどの、深く、重い実感がこもっていた。
その奇跡の夜の後、葵はまるで何かに憑かれたかのように、新しいコレクションのデザインに没頭した。そして、数ヶ月後に発表されたのが、「L'me de l'artisan(職人の魂)」と名付けられたコレクションだった。それは、プラチナという素材の持つ、冷たくも純粋な美しさを極限まで引き出し、アール・ヌーヴォーの有機的な曲線と、未来的なミニマリズムを大胆に融合させた、革命的なデザインだった。
そのコレクションは、国内外で絶賛の嵐を巻き起こした。人々は、そのデザインの奥に潜む、痛切なまでの物語性と、気高い魂の輝きを感じ取ったのだ。葵は、若き天才デザイナーとして、世界にその名を轟かせることになった。彼女のデザインの根底には、常に、ベル・エポックのパリで出会った、一人の孤独な天才職人への、深い敬意と、鎮魂の祈りが流れていた。
数年後、葵と海斗は、新婚旅行でパリを訪れた。二人は、ヴァンドーム広場に本店を構えるカルティエを訪れた後、夕暮れのセーヌ川のほとりを、ゆっくりと歩いていた。ポン・デ・ザール(芸術橋)の上で立ち止まると、夕陽が、葵の左手の薬指に輝く指輪に最後の光を注ぎ、ダイヤモンドが、まるで小さな虹のかけらを散りばめたかのように、七色に輝いた。
葵は、その無数の輝きの乱舞の中に、ジュリアンの、あの憂いを帯びた、優しい笑顔が見えたような気がした。
「Merci(ありがとう)」
風に乗って、彼の声が聞こえた気がした。
葵は、そっと指輪に口づけをした。
ジュリアン、あなたの魂は、あなたの芸術は、決してパリの片隅で消え去ったりはしなかった。あなたの愛は、決して無駄にはならなかった。それは、時を、空間を、百年という途方もない歳月を越えて、新しい時代の、新しい愛の物語へと、確かに受け継がれたのだから。
南船場の片隅で見つけた一つの指輪から始まった物語は、時空を越えた二つの魂の共鳴を繋ぎ、令和の時代に、最高にロマンティックで、そして永遠のハッピーエンドを迎えた。葵の指で、ダイヤモンドは、これからも、一人の名もなき職人の、気高い魂の物語を、静かに、そして誇り高く語り継いでいくのだろう。永遠に。


(2025年 10月 27日 6時 12分 追加)
前にヤフオクで買って使ってなかった一眼レフが出てきたので、セクシーショット撮影。使ってなかった理由思い出したw
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